数多くの最強チームが活躍するアクション海外ドラマをお届けしているアクションチャンネルでは、「最強チームのつくりかた」について、ビジネスやスポーツの現場で組織運営や人材育成に取り組む方々にインタビューする企画をお届けしています。
今回は、有数のグローバル企業で日本での事業展開をゼロからスタートしてきたビジネス・ディベロップメントのプロフェッショナル奥江靖さん。
新規事業の立ち上げから組織拡大、または、事業統合という難しい局面において必要なチームビルディングとリーダーシップとは?

<プロフィール>
奥江靖(おくえ やすし)
Buyandship Japan合同会社 職務執行者。AOL、Amazon、Twitter、グルーポン、フードパンダといったグローバルIT企業において豊富なエグゼクティブ経験を積み、日本市場での収益責任とオペレーション全般を長年にわたり担う。
越境ECおよび物流事業の拡大に注力し、日本市場とグローバルテクノロジーを結びつける戦略を推進している。特にAOL、フードパンダ、Buyandshipでは、日本法人の立ち上げをゼロから主導。海外のカルチャーを一方的に持ち込むのではなく、日本の文化や価値観を尊重しながらグローバルスタンダードを融合させ、日本のチームが成果を上げやすい環境づくりに尽力。
新規事業の立ち上げから収益化、組織拡大に至るまで、一貫して成果を残している。
現在は、Buyandship日本法人の代表として、日本事業をゼロから立ち上げ、オペレーション全体を統括。日本のEC商品を海外に広めるために、主要ECサイトや大手小売業者との戦略的パートナーシップを構築し、事業基盤を拡大してきた。加えて、日本国内の投資会社や事業パートナーとの関係を深め、持続的な成長を支える体制づくりにも注力している。
趣味は旅行、サイクリング、音楽・映画鑑賞。
-どのような場面で「チームビルディングの重要性」を感じますか?
奥江靖さん(以下、敬称略):
最もチームビルディングの力を実感したのは、以前在籍していた外資系IT企業での、極めて困難な事業統合(PMI)プロジェクトです。
当時、予期せぬ形で競合会社との合併が、当初の想定より半年も早く決定しました。両社とも日本進出から1年未満で、企業文化もバックグラウンドも全く異なるチーム同士が、短期間で事業を統合する必要に迫られました。私たちは、既存の顧客に一切迷惑をかけることなくビジネスを継続させながら、同時に事業拡大のための強固な基盤を築かなければなりませんでした。さらに、この全プロセスをコロナ禍で、ほぼ完全にリモートで進めるという前例のない挑戦でした。
このような絶望的な状況下で、私たちを支えたのが、強固なチームビルディングです。メンバー一人ひとりが「このプロジェクトを絶対に成功させる」という強い意志を持っていました。特に、競合から加わったメンバーが「元の会社を超えたい」という、ポジティブで建設的な動機を持っていたことは、大きな追い風となりました。
この個々のエネルギーを最大限に活かすため、私はオンライン会議の頻度を増やし、密なコミュニケーションを徹底しました。対面ではないからこそ、あえて頻繁に顔を合わせ、互いの進捗や考えを共有することで、物理的な距離を超えた結束が生まれたのです。結果として、私たちは想定をはるかに超えるスピードでPMIを完了させ、チームとしての成功を確信しました。
-チームビルディングが組織にとって重要な理由は何だと思いますか?
奥江:
チームビルディングが組織にとって重要な理由は、それが「個の力をスケールさせ、相乗効果を生み出す唯一の仕組み」だからです。
どんなに優れた個人であっても、その能力や経験には必ず限界があります。しかし、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人々がチームとして集結し、それぞれの強みを持ち寄ることで、単なる総和以上の、爆発的な相乗効果が生まれます。
たとえば、チームに以下のような役割を持つメンバーがいたとします。
ビジョナリー: 組織の進むべき方向性を示す。
ストラテジスト: 複雑な状況を分析し、最適な計画を描く。
エグゼキューター: 計画を確実に実行し、成果につなげる。
イノベーター: 独自の発想で、停滞した状況を打開する。
クリティカルシンカー: 潜在的なリスクを検証し、チームを保護する。
コネクター: メンバー間の関係を円滑にし、連携を促す。
これらの役割が有機的に連携することで、一人では決して到達できないスピードとスケールで、困難な課題を乗り越えることができます。また、チームは互いの弱点を補い合い、精神的な支えにもなるため、予期せぬ壁に直面しても持続的に挑戦し続けることが可能になります。
つまり、チームとは「一人では限界のある力を、組織として無限に広げるための装置」だと考えています。
-チーム作りにおいて、最も大切にしていること、また「これはやってはいけない」と考えていることがあれば教えてください。
奥江:
チーム作りで最も大切にしているのは、誰もが安心して自由に意見を言える、「心理的安全性」の高いオープンな環境をつくることです。
チームにとって最も危険なのは、異なる意見や疑問が即座に否定される雰囲気です。「こんなことを言ったら馬鹿にされるのではないか」「的外れな意見だと思われたくない」といった不安が蔓延すると、対話は止まり、チームは思考停止に陥ります。
リーダー自身が、部下の意見を頭ごなしに否定しない姿勢を示すことが不可欠です。たとえその意見が的外れに見えたとしても、「なぜそのように考えたの?」とソフトな問いかけをすることで、その裏にある本質的な考えや潜在的な強みを引き出すことができます。
もしチーム内に他人の意見を強く否定するメンバーがいた場合も、その場の雰囲気が壊れないよう、私は間に入り、発言の意図を確認するなどして、対話の軌道修正を心がけています。健全な対立は成長の糧ですが、他者を攻撃する雰囲気は、チームの信頼を根底から揺るがす行為であり、断固として避けるべきだと考えています。
-これまでに「チーム作りで最も苦労したこと(それをどう乗り越えられたか)」や「失敗から学んだこと」があればお聞かせください。
奥江:
チーム作りにおいて最も苦労し、同時に最も重要な学びを得たのは、外資系IT企業での日本撤退、全社員同時解雇という、非常に厳しい撤退局面を2度経験したことです。
1度目の解雇時、私自身も含めた社員全員が対象者でした。しかし、その場で私たちは「顧客やパートナーへの影響を最小化すること」を最優先のミッションに掲げました。この目標に向かって、チーム全員が残された業務に徹底的に取り組みました。この経験は、私たちに「困難な状況でも、共通の目的のために一丸となれば、強い一体感が生まれる」という、揺るぎない確信をもたらしました。プロジェクトの達成後には、解雇という厳しい現実にもかかわらず、深い達成感と、次のステップへの前向きな気持ちがチーム全体に満ち溢れていました。
2度目の経験では、この成功体験を活かし、さらなる情報共有とオープンな対話を徹底しました。不安を抱えるメンバーに寄り添い、個々のキャリアプランをサポートすることで、前回と同様にポジティブな雰囲気で移行を完了させることができました。
この2度の経験から学んだのは、チームが直面する最大の試練は、必ずしも外部の競合ではなく、内部の不信感や混乱であるということです。だからこそ、どんなに厳しい状況でも、リーダーが明確なビジョンと責任を示し、チームを一つの目的に向かわせることが、成功への鍵となります。


職場の風景。猫社員さんも働く。
-理想のチームをつくるために、どのような役割やタイプの人が必要だと思いますか?
奥江:
理想のチームとは、まるでジャズセッションのように「打てば響く」集団です。個々のメンバーがそれぞれの役割を理解し、相手の行動や発言に即座に反応し、自然な形で補完や連携が生まれる状態です。この即応性によって、無駄な遅延や不必要な対立なく、チーム全体として最高のパフォーマンスを発揮することができます。
このような「打てば響く」チームを構築するためには、単にスキルが高い人材を集めるだけでは不十分です。各々が異なる強みと視点を持ち寄ることで、複雑な課題を多角的に捉え、革新的な解決策を生み出すことができます。これらの多様な役割を担う人材が有機的に結合し、互いに即応し合うことで、無駄な遅延や不必要な対立なく、チーム全体として最高のパフォーマンスを発揮することができます。
-理想とするリーダー像、また影響を受けた人物や言葉などがあれば教えてください。
奥江:
幸運なことに、これまで多くの優れたリーダーから助言を受けてきました。その中でも、私のリーダーシップの根幹を形成している二つの言葉があります。
一つは、以前のメンターから贈られた「一人称で話せ」という言葉です。これは、何かを語る際に「〜すべきだ」「〜が正しい」という三人称の言葉ではなく、「私は〜すべきだと考える」「私は〜したい」と、主語を「私」にするという教えです。これは単なる話し方の問題ではなく、「すべての言動に責任とオーナーシップを持て」という、リーダーとしての心構えを示しています。この言葉は、部下やチームと向き合う上で、常に自分ごととして考え、行動する指針となっています。
もう一つは、以前勤めた大手ゲーム会社の社是であった「強靭な意志の力を持とう」です。当時の私はその言葉の重みを理解していませんでしたが、リーダーとしてチームを率いるようになってから、この言葉がどれほど重要かを痛感しました。リーダーは、困難な状況下でも、決して揺らがない強い意志を持つことで、チームに安心感と確信を与え、目的達成まで導くことができます。
これら二つの言葉は、論理的な思考や戦略だけでは乗り越えられない壁に直面したとき、常に私を支え続けています。
-チームワークを描いた映画・ドラマ・漫画・アニメ・書籍などの中で、印象に残っている作品があれば教えてください。
奥江:
チームワークとリーダーシップの本質を深く描いている作品として、映画と書籍をそれぞれ挙げます。
映画『十三人の刺客』(三池崇史監督):『十三人の刺客』では、島田新左衛門(役所広司)が、目的の明確化→仲間集め→戦い方の設計→現場裁量の最大化→自ら最前線で体現という成果を生むリーダーの基本動作を一貫して示します。彼は「正しさ」だけでなく「勝ち方」まで設計し、最後は自らリスクを引き受けて成功確率を押し上げます。任務は「天下のため」という一行に純化され、暴君を討つことは目的ではなく秩序を守る手段だと定義します。目的が研ぎ澄まされれば判断はぶれず、現場は自律して動けます。勧誘の場面では、腕前だけでなく胆力・持ち味・動機を見抜き、チームを“偏差値の平均”ではなく役割の総和で最適化します。若手・異端・破天荒を含む「凸凹の最適配置」こそが勝ち筋をつくります。ビジネスでも、同質化を避けて補完関係で編成したほうが、アウトプットの上限は確実に上がります。
書籍『ピクサー流 創造するちから』(エド・キャットムル):創造性を「天才の発想」に依存するのではなく、「組織文化の設計」によって育てるというピクサーの哲学は、私に大きな影響を与えました。この本は、失敗を許容する文化、率直なフィードバックを奨励する仕組み、そして明確なビジョンと現場の裁量を両立させることこそが、真のリーダーシップの本質であることを示しています。この考え方は、私がチームの心理的安全性と自律性を重視する上で、常に参照する原点となっています。
-最後に…ご自身が考える「最強のチーム」に最も必要な要素を一つ教えてください。
奥江:
「最強のチーム」に最も不可欠な要素は、揺るぎない「心理的安全性」です。
どれほど優秀な人材を集めたとしても、メンバーが「安心して意見を言えない」「失敗を恐れて発言できない」と感じる環境では、その力は決して最大限に発揮されません。チームは停滞し、リスクを回避するだけの無難な選択肢に流れがちです。
逆に、心理的安全性が確保されたチームでは、メンバーは失敗や異論を口にすることを恐れません。その結果、活発な対話が生まれ、互いの弱点を自然に補完し、リスクを共有しながら、より早く、より質の高い最適解にたどり着くことができます。
私にとって「最強のチーム」とは、単に能力の総和が高い集団ではありません。それは、「安心して挑戦し、対話ができる場」を基盤に、個々が持てる力を最大限に引き出し合う、生き生きとした有機的な集団だと考えています。

こちらにも猫社員さんが。

<事業内容>
Buyandshipは、日本やアメリカ、韓国、ヨーロッパなど世界各国のECサイトで購入した商品を、日本を含むアジア各国へ届ける「国際転送・代理購入サービス」を展開。
ユーザーは海外倉庫の住所を指定するだけで簡単に商品を受け取ることができ、日本未入荷の限定品や日本直送に対応していない商品も手軽に購入可能。さらに、代理購入や複数商品のまとめ梱包、実重量に基づく明瞭な料金体系、リアルタイム追跡、日本語カスタマーサポートなどを揃え、初めて海外通販を利用する人でも安心して使える仕組みを整えている。
現在、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、フィリピンなどを中心に200万人以上の会員を抱えており、日本のEC事業者にとっては、海外展開の販路拡大やブランド認知向上を支援するパートナーとしての役割も果たす。
次回は、1902年創業の老舗で一般用医薬品などの卸売業を手掛けるアルフレッサ ヘルスケア株式会社代表取締役社長・西田誠さんのインタビューを公開します。どうぞお楽しみに!
数多くの最強チームが活躍するアクション海外ドラマをお届けしているアクションチャンネルでは、「最強チームのつくりかた」について、ビジネスやスポーツの現場で組織運営や人材育成に取り組む方々にインタビューする企画をお届けしています。
本企画では、スポーツ、ビジネス、エンタメなど、様々な分野で卓越したチームワークを築いてきた方々にお話を伺いながら、「最強のチーム」を生み出すヒントを探っていきます。
今後、随時更新してまいりますので、お楽しみに!
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平日の夜は、数々の難事件に挑む、最強チームの活躍を描くドラマを放送!
一人では困難なことも仲間となら立ち向かえる!チームの絆で事件を解決するクライム・アクションを放送!
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