アクション作品が続々と放送されるAXNにて、7月はタフでカッコいい凄腕の女性たちが大活躍する「世界のヒロイン・アクション特集」が放送されます。その中から、ドイツ発のクライム・アクション「刑事サニー サイコキラーを追う女」をピックアップし、見どころを深掘りしていきたいと思います!
「刑事サニー サイコキラーを追う女」は、2022年にドイツの配信サービスARD Mediathekで配信された全6話のドラマです。本作は、同年にARD Mediathekで配信されたフィクション作品の中で最も見られた番組となり、ドイツのTV番組に送られる様々な賞を受賞するなど、ヨーロッパでは大きな話題を呼びました!
州刑事局の女性刑事ゾニア・“サニー”・ベッカーは、捜査の指揮を任されるほど頼りになる敏腕刑事でしたが、体調を崩して療養休暇を取ります。その後、トラウマを抱えながら、万全とは言えない状態でも、仕事をしている方が自分のために良いと考え復職したサニー。彼女の職場復帰の日、女性を狙った凶悪な連続殺人犯のハフナーが医療刑務所から脱走します。州刑事局がハフナーの追跡捜査を担当することになるのですが、捜査の指揮を任されたのはサニーではなく、同僚のマークスでした…。
無理をして職場復帰するも、プライドを傷つけられるサニー。おまけに、休職前の事件の対応を問題視した上司から、サニーはカウンセリングが必要だと言われてしまいます。彼女と州刑事局のチームメンバーとのやり取りや、心理療法士のカウンセリングの様子から、サニーに何があったのかが少しずつ紐解かれていく一方、逃亡したハフナー側も詳細に描くことで、ハフナーがどれほど凶悪なのか、彼と被害者や家族との関係がどれだけ歪(いびつ)なものであるのかが分かってきます。
余計な説明ゼリフなしに、キャストの名演技と秀逸な脚本・演出によって、サニーのトラウマの元凶と、チームの人間模様、そしてハフナー事件の裏側が明かされていくのが見ものです!
本作の登場人物には、主人公のサニーと、連続強姦殺人鬼のハフナー、サニーの同僚のマークス、ちょっと頼りない後輩のクーバ、上司のラルフ、以前ハフナーの事件を指揮していたトルステン、サニーと同棲している恋人で鑑識のアレックスなどがいます。
サニーとマークスは、捜査の指揮権を巡ってライバルのような関係になりますが、基本的には協力して事件に挑む親しい間柄。でも、サニーは刑事の仕事を天職だと思っているので、男性刑事に負けたくないという気持ちがあります。同様に、マークスにも、女性であるサニーに上に立たれたくないという気持ちがあり、二人の複雑な関係はハフナー事件の間、続いていきます。
クーバはサニーを信頼し、捜査に食らいついてこようとしますが、脇が甘く、足を引っ張ってしまうような後輩です。
直属のボスであるラルフは、無鉄砲気味のサニーに頭を悩ませられます。サニーにとって、ラルフは全面的に頼れる存在なのかは、やや分かりにくいところ。
トルステンは、単独で動くことがあるサニーの行動を危険視し、現州刑事局の捜査方法に不満を持っている様子。なぜなら、ハフナーに同僚女性刑事を人質にされた過去があり、ハフナーがいかに危険であるか熟知しているからです。でも、共に捜査をするうちに理解し合えるようになり、サニーとトルステンの溝は徐々になくなっていきます。
アレックスは心配性の彼氏という印象ですが、誰も知らないサニーの秘密を共有しており、彼女を守りたい、無理をさせたくないと思っている優しい男性です。
そして、ハフナーは人を操る恐ろしいサイコパスで、サニーにも深く関わってきます。敏腕刑事のサニーにとっても、ずっと彼を追い続けているトルステンにとっても、非常に手ごわい犯罪者です。
主人公のサニーはもちろん、それぞれのキャラクターの背景が詳しく描かれていて、個性的な登場人物たちがドラマを盛り上げ、面白くしています!
壮絶なトラウマを抱えつつも、事件の捜査が生き甲斐であり、優れた刑事であるサニー。自信のつらい過去を同僚に話すことができず、恋人のアレックスを心配させながらも、無鉄砲に現場に飛び出していく、この複雑な主人公を演じるのは、「フォー・ハンズ」や「顔のないヒトラーたち」などの映画に出演してきたドイツ出身のフリーデリーケ・ベヒト。
ベルリン芸術大学で演技を学んだ彼女は、演劇でも活躍し、数々の賞にノミネートされた演技派女優です。
出演作はほかに、ケイト・ウィンスレットがアカデミー賞・主演女優賞に輝いたヒット映画「愛を読むひと」や、ホロコーストを生き延びたユダヤ人哲学者ハンナ・アーレントの伝記映画「ハンナ・アーレント」などがあり、TVシリーズ「パルファム -香りに魅入られた悪魔-」では主役の捜査官役を務めています。
演技力に定評のあるフリーデリーケが、「刑事サニー サイコキラーを追う女」で熱演するサニーは、視聴者を魅了するキャラクター。私も全6話、彼女の魅力に大いに引き込まれました!
「刑事サニー サイコキラーを追う女」に出演するほかのキャストたちも、フリーデリーケ同様、主にドイツの作品で活躍している俳優たちです。
サニーと指揮権争いをする同僚のマークスを演じるクリストフ・レトコフスキは、映画「フォー・ハンズ」でもフリーデリーケと共演しました。ほかには、映画「二重性活 女子大生の秘密レポート」や、TV映画「グリム童話・青いあかり」に出演。後者では主演を務めています。
凶悪犯だけれど、女性たちを夢中にさせることができる独特の魅力を持ったハフナーを怪演しているフェリックス・クラーレは、TVシリーズ「葬儀屋の女」や、TV映画「ブラック・セプテンバー ~ミュンヘンオリンピック事件の真実~」に出演しています。
ミスを犯し、サニーたちに迷惑をかけてしまうクーバに扮しているオレグ・ティコミロフは、ドイツで俳優業をしていますが、ロシア出身の役者です。TVシリーズ「バビロン・ベルリン」や、TV映画「恵まれた子供たち」に出演しています。
サニーの上司で、何か隠し事がありそうなラルフを演じているトーマス・ロイブルは、日本でも話題を呼んだ映画「ありがとう、トニ・エルドマン」や「ヒトラーのための虐殺会議」でも活躍。両作とも、忘れられない印象的な作品として心に残っています。
印象的な作品と言えば、サニーの恋人であるアレックス役のゴロ・オイラーは、今は亡き樹木希林さんと映画「命みじかし、恋せよ乙女」で共演し、主演を務めていました! この映画の主人公と、「刑事サニー サイコキラーを追う女」のアレックスが同一人物だとは、すぐには気づきませんでした。
日本でも公開や放送されている作品に出演する俳優たちが、「刑事サニー サイコキラーを追う女」に多く出演していることにも注目していただきたいです。
「刑事サニー サイコキラーを追う女」の監督を務めるフロリアン・バクスマイヤーは、アカデミー賞の短編実写映画賞部門にノミネートされた「Die rote Jacke (原題)」に携わるなど、数々の話題作を手掛ける名監督です。主な監督作に、映画「トレジャー・オブ・スケルトンアイランド」、TV映画「レジェンド・オブ・ロンギヌス」や「トレジャー・ハンターズ アインシュタインの秘宝を追え!」、TVシリーズ「トライブス:明日を拓きし者」などがあります。
ドイツ発の作品はまだあまり観たことがないという人にも、ドイツ映画はよく観るという人にも、ぜひ「刑事サニー サイコキラーを追う女」をオススメしたいです。セリフで長々と状況を語るというようなシーンはあまりなく、ドイツの名女優であるフリーデリーケ・ベヒトの多彩な表情演技によって、サニーという深みのあるキャラクターが実に巧みに体現されているし、共演者たちも静かな演技でドラマを盛り上げ、米国の刑事ドラマとはひと味もふた味も違う魅力を醸し出しているので必見です!
(ライター:清水久美子)
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