2023/10/18

【わんこ刑事が街を駆ける!】犬好き必見の刑事ドラマ『レックス』シリーズ徹底比較!【オリジナル版・カナダ版・イタリア版】

【シリーズ原点!オリジナル版『レックス~ウィーン警察シェパード犬刑事~』とは】

そもそも『レックス』シリーズと言われてもピンとこない方のために、大ヒットの原点であるオリジナル版についてもご紹介しましょう。

『レックス~ウィーン警察シェパード犬刑事~』は1994年から2004年にかけて製作されたオーストリアのドラマです。捜査官としての腕は立つものの、無茶ぶりと単独行動が玉にキズな刑事モーザーがひょんなことから警察犬のレックスを引き取ることに。離婚したばかりで私生活も仕事も悲惨な状態だったモーザーですが、大きな身体と賢い頭を持つレックスの到来のおかげで彼の人生は良い方向へ変化していきます。

元妻が去った後の彼の家はまるで竜巻が通った後のようにすっからかん(彼女が家具と共に去りぬをしたため)だったのですが、当然ですが人間のための家具もないのに犬のためのグッズがあるわけありません。そこでモーザーがどうしたかというと、レックスが喉が渇いた時のために、家の中で一番大きなトロフィーを水入れにしてしまいます。一応は「お前はソファーで寝るんだぞ」と言ってみたモーザーですが、レックスがこっそり毛布を持ってベッドルームに入ってきても追い出したりしません。レックスがいたずらをしたときには「こらっ」と叱ってみるものの、首を傾げて自分を見上げるレックスの顔に「五秒以上長くは怒れないよ」とすぐに許してしまったり……レックスとの生活にすっかり骨抜きにされたモーザーの姿に思わず笑顔になってしまうハズです。

ドラマの魅力としてはもちろん、とにかく「レックスが可愛い!賢い!」ということになるのですが、それは基本的にどの『レックス』シリーズでも同じなので、それ以外で。本作は1994年からスタートしているので、今見てみるとかなり新鮮に映るシーンが多いですね。第一話ではウィーンで貿易会社を営む男性が殺害される事件が発生するのですが、ドラマのあちこちで「ソ連の大改革で……」「ソ連……ああ、ロシアでしたね」みたいな会話が登場します。ソビエト連邦の解体が宣言されたのが1991年ですから、まだその後の混乱の余波がヨーロッパに来ていることがよくわかるシーンとなっています。

また、今回ご紹介している3シリーズの中では、唯一「犬恐怖症」の刑事が登場しているのも本作となります。モーザーの同僚のシュトッキンガーはとにかく犬を恐れており、レックスともできるだけ離れていたいのですが、レックスは彼がお気に入り。モーザー曰く「犬が怖い人が好きなんだ」とのことですが、筆者が見ている限りでは彼がいつもお菓子やサンドイッチをスーツに隠し持っているからだと思います。筆者の愛犬も、食べ物の包装紙を開ける音がすると、いつのまにか食卓に顔をのぞかせていたものです。さっきまでいびきをかいていたはずなのに!

【わんこ刑事が手柄を立てまくるカナダ版『ハドソン&レックス~セントジョン警察シェパード犬刑事』】

カナダ最東端の港町セントジョンズを舞台に、刑事のハドソンと相棒のレックスが凶悪犯罪に立ち向かう『ハドソン&レックス~セントジョンズ警察シェパード犬刑事』。2019年にスタートし、カナダCitytvでは最初の6エピソードで250万人以上もの視聴者を獲得し、同局のオリジナルシリーズとしては最高視聴率を記録!すでに本国カナダではシーズン6の放送も決定している大ヒットシリーズです。

重大犯罪課のハドソン刑事の頼もしくも愛くるしい相棒レックスが主人公の本作。離婚して故郷に帰ってきたハドソン刑事の背景や、元の飼い主を銃撃事件で喪ったレックスを保護したという出会いのエピソードなどオリジナル版を踏襲しつつ、現代のカナダに落とし込む形で描かれています。

捜査中に小腹が減った二人がホットドッグの出店で頼むのは決まって「ホットドッグ二つ、パン抜きで」。人間の食べ物は基本的に犬の身体には「しょっぱすぎ/脂っこすぎ/消化できない」のどれかなので、間食を選ぶときは人間が犬に合わせていくスタイルを取るんですね。「これは身体に悪いから!」と口で言ってみても伝わりませんから、いっそ犬が食べても大丈夫なものばかり食べるようになるのは犬好きならあるあるなのかもしれません。そういえば、筆者の幼少期のおやつといえばリンゴだったのですが、大体いつも半分に割って犬と分け合う食べ方をしていたら、たまに丸かじりで食べようとしていると異議のありそうな顔で見つめられたこともありました。彼女からしてみると、人間が急に食べ物を独り占めし始めたように見えたのかもしれません。

さてそんなレックスとハドソン刑事が所属しているのは、港町にあるセントジョンズ市警察署。警察官たちはみんなレックスが大好きで、彼が署内を歩き回っても誰も咎めません。それどころか、二人のボスであるドノヴァンは自分のオフィスにレックスが入ってくると強面に笑みを浮かべて撫でてあげます。同僚たちも二人を見つけるとまずレックスに挨拶をする可愛がりっぷり。ですがそれもひとえに、警察犬としての厳しい訓練を積んだレックスを信頼しているからこそです。「ここで待っていなさい」とハドソン刑事から言われれば、たとえ目の前に山と積まれたドーナツがあったとしても、それをほかの人間が美味しそうに頬張っていたとしても、じっと我慢できる意思の強いわんこ刑事です。

優れた感覚と無尽蔵の体力でそこまでも犯人を追跡できるレックスですが、本気を出したジャーマンシェパードの脚の速さに人間が追い付くのは至難の業。そこでハドソン刑事は先回りしたり、監視カメラで彼の姿を探したり、車で追いかけたりと、ありとあらゆる人間の知恵でもって、相棒のサポートを頑張っています。

【恋多き伊達男とピザ好きわんこのイタリア版『マルコ&レックス~ローマ警察シェパード犬刑事』】

三作目は、舞台をイタリア・ローマに移した『マルコ&レックス~ローマ警察シェパード犬刑事』です。イタリアが舞台なだけあり、ここのレックスはトマトのピザが大好物。相棒マルコの目を盗んで“散歩”に出かけては顔にトマトソースをつけて帰ってきます。「身体に悪いんだぞ」とマルコからお叱りを受けても、分かっているようないないような。都合が悪くなると鼻を掻く癖があるお茶目なわんこです。

そんなレックスの相棒マルコは、シリーズでも屈指の肉体派刑事。時間を見つけてはサンドバッグで筋骨隆々なボディの維持に努めるストイックな男ですが、すれ違う女性の香水をほめ、デートに誘い、時には捜査中に知り合った女性と“うっかり”一夜を共にしてしまう一面も。そんな性格が災いしているのか、あるいはイタリアのクライムドラマの宿命なのか、マルコはほかの『レックス』シリーズの刑事たちと比べてもダントツで負傷率が高いです。毎回怪我してるんじゃないか?というぐらい銃で撃たれたり、事故に遭ったり、地面に生き埋めにされたり(!)します。そんなピンチに陥りやすいマルコを救うのもレックスの役目。密室に閉じ込められた彼のために鍵を見つけ、生き埋めにされたマルコを掘り当て、犯人に勇敢にとびかかり……ほかのシリーズのレックスに負けず劣らず大活躍を見せてくれます。

また、今作のレックスはまるで人間の捜査官の一人のように扱われているシーンが特に多いのも特徴です。第一話でマルコとレックスはもともといた警察署からローマ警察署へ異動となります。そのローマ警察署のフィオーリ署長は普段オフィスを開けっ放しにしているのですが、レックスが入ってきても「ノックはどうしたの」と言ってみたり、容疑者がレックスの兄弟犬であることが判明すると、レックスを捜査から外そうと言ったりします。その理由は、「身内だからレックスが見逃そうとする可能性がある」とのこと。それに対して、二人をよく知る別の同僚が「まさか、彼らはいつでも信頼できる仕事をしてきただろ」と擁護するシーンも。犬だからと馬鹿にしないでどのキャラクターも真剣にこんな感じなのです。もしかしたらイタリアのジョークなのかとも思ったのですが、特に茶化している流れでもなかったので、脚本家の人が本当にめちゃくちゃ愛犬家である可能性が高いですね。

【世界でも稀にみる「犬が主人公」のドラマ!あなたのお気に入りは?】

長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございます!オリジナル版である『レックス~ウィーン警察シェパード犬刑事』の放送からもうすぐ30周年。強く、賢く、愛くるしいジャーマンシェパードのレックスが人間の相棒と共にさまざまな犯罪に立ち向かっていくシリーズは、世界各国でリメイクされ長く愛されてきました。それぞれの製作された国や地域、時代の違いはあれど、犬と人との絆を描いたこれらの作品の魅力が色あせることはありません。

四万年以上人間と共同生活を営んできた生き物として知られる犬ですが、彼らがどうしてここまで人間に寄り添ってくれるのか、本当のところはまだほとんど分かっていません。食べ物を安定供給してもらえるから?群れで生活することへの本能的な安心感があるから?それとも、私たちがそうであるように、一緒にいると幸せを感じているからでしょうか?彼らにとって心地よく、それでいて人間側の生活に破綻が生じないような境界線を探りつつ一緒に暮らしていくのは簡単ではありません。ビリビリにされた新聞紙の山や、虫の息になった家電を見る度にため息をつきたくなることもあるかもしれません。しかしそれでも、ふと目が合った時に、心が通じ合っているのではないかと思うことをやめられないのです。

『レックス』シリーズはかなりフィクションに寄った内容ですが、犬と人とが同じ場所で同じ目的をもって寄り添う姿を描き続けてきました。画面の向こう側でレックスが人間の相棒と共にお仕事を頑張る姿に、国境を越えた人気が集まるのは、もしかしたらそんな人類のふわふわの友への飽くなき興味と愛情が沸き起こるからかもしれませんね。

今回ご紹介した三作品をはじめ、『レックス』シリーズでは舞台は変われども、レックスの愛くるしさや人間の相棒との固い友情などはほぼ一貫して完璧な形で描かれております。作品それぞれの温度差(コージーミステリー寄りであったり、クライムサスペンス寄りであったり)はありますので、ぜひお気に入りの作品を見つけてもらえれば嬉しいです。そしてあわよくば、「働くわんこ」としてのイメージが強いジャーマンシェパード犬の可愛さや賢さにも注目して、ドラマを楽しんでください!

                                                                                                  (文:うりまる)

【放送情報】

★ミステリーチャンネル
『レックス~ウィーン警察シェパード犬刑事~』  ※10年ぶりに蔵出し放送!
 字幕版:11/1(水)夜8:00スタート 毎週水曜夜8:00

★アクションチャンネル
『ハドソン&レックス~セントジョンズ警察シェパード犬刑事』  ※独占日本初放送!
 字幕版:11/1(水/犬の日)夕方4:00から第1~3話 先行放送
 字幕版:11/6(月)夜9:00スタート 毎週月曜~金曜 夜9:00から2話連続

『マルコ&レックス~ローマ警察シェパード犬刑事』  ※独占日本初放送!
 字幕版:11/4(土)昼12:00 シーズン1全12話 先行一挙放送
 字幕版:11/25(土)昼12:00 シーズン2全12話 先行一挙放送
 

 

© BetaFilm © SAT 1 © Shaftesbury/Pope Productions Photo by Duncan de Young for Shaftesbury and Pope Productions © Shaftesbury/Pope Productions Photo by Jessie Brinkman Evans for Shaftesbury and Pope Productions © Shaftesbury/Pope Productions Photo by Greg Locke for Shaftesbury and Pope Productions © Shaftesbury/Pope Productions © DOG’S LIFE SRL 2013

 

 

 

 

うりまる
2017年ごろから海外ドラマ・映画・ゲームなどを中心に執筆中。特にまったりとしたコージー(Cozy)ミステリーが好きです。