現代のドイツを舞台に、アインシュタインの子孫にして国内随一の頭脳を持つ若き天才教授が難事件解決に挑む本格ミステリーが日本上陸!ドイツ本国での放送直後から大きな話題を呼びシーズン3まで製作され、その後世界100以上の国と地域で展開された人気シリーズの魅力を余すことなくご紹介します!
主人公フェリックス・ヴィンターベルクは、ドイツでも有数の大学で教鞭を執りながら、世界を変え得るエネルギー問題に取り組む天才科学者。そんな彼の通称は“アインシュタイン”。そう、彼はなんとあのアルベルト・アインシュタインの玄孫なのです。ご先祖様譲りの比類なき頭脳で若くして教授の職に就く彼ですが、その優秀な脳みそはどうやら素晴らしい理論を思いつくのと同じくらいに問題行動の指令も出しているようで。
はじまりの物語である「Episode.0」では、麻薬問題を抱える彼が、頭痛の検査で赴いた病院で薬の窃盗を画策!あっという間にお縄となった彼は、警察の捜査に 協力する見返りに禁固刑を免れようとします。
彼がなんとしてでも禁固刑を避けたがるのには理由があります。それは、彼の父親が遺伝子疾患によって若くしてこの世を去り、フェリックスは自分もその病気を発症しており、余命はあと七年だ、と自己診断を下しているからでした。はじめは「麻薬使用をチャラだなんてそんな馬鹿な話がありますか」という感じの刑事たちも、一年以上も捜査が難航していた 事件を五分で解決されてしまっては頷くしかありませんでした。まさしく猫の手も借りたい状況の中で、猫ほどかわいくはありませんが優秀な手の持ち主がやってきたのですから。
ということで、21世紀のアインシュタインが、現代のドイツで起こる様々な犯罪に科学的な視点から立ち向かってゆく…というドラマです。
さて、本作の魅力はなんといっても、主人公フェリックス・ヴィンターベルクの個性が強すぎる点ですね。なんといっても彼のご先祖様はあのアルベルト・アインシュタイン!本人曰く「浮気相手との間に生まれた非嫡出子の系譜」とのことですが、それでもご先祖様はご先祖様です。さまざまな逸話や名言が数多く残るアインシュタインですが、恋多き男性だったことでも有名ですね。ノーベル賞受賞前に浮気が発覚し、離婚後に前妻さんにノーベル賞の賞金を全額渡した…なんてエピソードも。
じゃあそんなアインシュタインの子孫であるフェリックス はどうなんだ、と気になるところですが。
彼もまた不品行(教え子と関係を持つんじゃない)、法律違反(麻薬を買いに行くんじゃない)、上司への反抗(学部長の仕事をロボットなら30分でできるとか言うんじゃない)などなど、余罪だらけの人生です。それでもなお、大学が彼をほっぽりださず、警察がことあるごとに彼を呼び戻すのは、やはり彼の頭脳があまりにも優秀だからですね。口や態度が災いしたり、ひらめきに時間がかかったりして、ドラマの中で実は結構ピンチに陥ることも多いフェリックスなのですが、「天才=感情に乏しいロボット人間」のような従来の頭脳派キャラクターとはいい意味で一線を画す味のある主人公です。
ちなみに、ドラマのシーンで映るフェリックスの自宅の壁には、輪切りにされた脳みその写真が額に納められて飾られています。これは、死後遺体から脳みそを盗まれ、瓶に詰められ、あまつさえスライスして売られるという散々な死後を迎えてしまったアルベルト・アインシュタインのエピソードにちなんだものだと思われます。別段、ドラマの中でこの写真について語られるシーンはないのですが、画面にちらりと映った時には、あまりの人気の過熱ぶりに死後もなかなか安らぐことのなかった天才物理学者に少し思いを馳せていただけると幸いです。
そんな主人公フェリックス・ヴィンターベルクを演じるのは、ドイツ出身の俳優・歌手のトム・ベック。ドイツで1996年から続く長寿番組『アラーム・フォー・コブラ11』 に2008年から2018年にかけて出演。計82エピソードに出演し、映画・テレビ・音楽のジャンルで卓越したパフォーマンスを披露した人物に贈られるドイツのアワード「Bravo Otto」賞を2度受賞(最優秀男性テレビスター部門)するという快挙を成し遂げました。2017年に制作されたアマゾン・ビデオのオリジナルドラマ『ユー・アー・ウォンテッド』 にも出演しています。
最初に病院でフェリックスを逮捕したばっかりに、彼のお守りをすることとなったシングルマザーの警部エレナ・ランゲを演じるのは、アニカ・エルンスト。彼女が出演した作品は残念ながら日本未上陸のものが多いのですが、2012年製作の映画『コーヒーをめぐる物語』に出演していますよ。一杯のコーヒーを飲み損ねた青年が、ベルリンをぶらつきながら災難続きの一日を過ごす様子をモノクロ映像で描いた作品で、ドイツのアカデミー賞主要6部門を獲得した長編作品です。日本では2014年に劇場公開されました。
このドラマで欠かせない人物としてもう一人。エレナの上司であり、フェリックスに捜査協力させることを決定したステファン・トレンメル警視を演じるのは、ロルフ・カーニスです。2004年に公開された映画『ヒトラー ~最後の十二日間~』や、第二次世界大戦終盤、市街戦の舞台となったベルリンを生き延びた女性の告白本を原作に2008年に映画化された『ベルリン陥落 1945』など、世界でも高い評価を受けた作品に出演しています。
ロルフ・カーニス(右)
個人的にはこのトレンメル警視というのが、ドラマを観続けていくうちにどうにも気になるキャラクターとなっていました。いえ、誤解のないように言っておきますが、この人まったく善人ではありません。ネタバレにもならないレベルなので大丈夫だと思いますが、めちゃくちゃ自分本位な人です(笑)。気になるのは自分の昇進だけ。正義について思うところを語るシーンなどほとんどありません(全くないかも)。自分の昇進に使えそうだと思えば、フェリックスに禁固刑をちらつかせて捜査協力させますが、フェリックスの鼻持ちならない話し方にもしっかり腹を立て、なんなら彼の失敗を喜ぶことも。それで捜査が進まなかったとしても、事件が解決しなかったとしても、です 。
なんでしょう……。ドラマに出てくるキャラクターって、良くも悪くも一面性が突出して描かれることがあるじゃないですか。もちろん人間味を出すために多少ブレる時もありますが、それでも基本的には一貫した態度や台詞を用意されていると思います。
ところが、この人めちゃくちゃブレるんですよね。なんというか、「ほんとにそのへんにいる人連れて来たんかな 」というぐらいに、怒ったり、野心に燃えたり、萎縮したり、とにかく自由です(笑)。いや、こんな人近くにいたらたまったもんじゃないだろうなと思いますが、それでも普通に職場とかにいるかもしれない……、と思わせる人間味のありすぎるキャラクターなのです。
イケメン天才科学者が主人公のこのドラマで、トレンメル警視が気になりすぎるという人は滅多にいないかもしれませんが、本作を視聴するときにちらっとでも「そういやあんなこと言ってたな…」と思い出していただけたら嬉しいです。ちょっとこしゃくな面白いおじさんですよ。
長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございます!世紀の天才アインシュタインの子孫が現代のドイツを舞台に、ご先祖譲りの頭脳と奇抜な発想で犯罪に立ち向かうミステリードラマ『アインシュタイン ~天才科学者の殺人捜査~』。フェリックスが大学で講義しているシーンや、志を同じくする仲間とビデオチャットをするシーンなどでは難しい専門用語が飛び交いますが、大体その後でフェリックスがきちんと噛み砕いて説明してくれますから、難しいことが分からなくても全く問題ありません。
ドラマは基本一話完結でありながら、シーズンを通して少しずつ変化していきます。ドラマの中の大きなキーポイントとして、果たしてフェリックスは本当に遺伝子疾患に侵されているのか?というものがあります。彼はこの持論をもって、自分の余命をあと七年と断じ、麻薬の力を借りてでも寝る間も惜しんで研究を進めています。終わりが見えたと思っているからこその無茶です。しかし、彼はいつか来る終わりを知っているからこそ、自分の理論を完成させ、世界を変えるための“遺産”を残そうとしています。ドラマの犯罪捜査のパートでは彼の破天荒っぷりについつい注目してしまいがちですが(なんせ滅茶苦茶なので)、そうではないシーンでちらりと垣間見える彼の“焦り”にも意識を向けていただけたら、このドラマがより一層味わい深いものになるのではないかな、と思います。
2015年に製作されたはじまりの物語である「Episode.0」はAXNミステリーで先行放送されます!2017年に製作されたシーズン1本編はAXNでの放送となりますので、両チャンネル を要チェックです!この時に「Episode.0」も合わせて放送されるとのことですので、見逃した方も、見直したい方も安心ですね。本国ドイツで大ヒットした本作、ぜひぜひ気になる方はチェックしてみてください!
(ライター:瀧脇 まる(うりまる))
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